ESSとは自分自身のコピーにたいしてうまく対抗できる戦略のことであると。その根拠を以下に述べる。成功する戦略とは、個体群の中で支配的となる戦略である。したがって、それ自身のコピーと出会うようになる。したがってまた、それは自分自身のコピーとうまく対処できなければ、成功した状態に留まることができないだろう。
ESSというのは、”Evorutionally Stable Strategy” のことで、「進化的に安定的な戦略」という意味だそうだ。
ある遺伝子が自分の利益のためだけにとにかく相手を利用するだけ利用して最後は裏切るという戦略をもってして繁栄した場合（この戦略は短期的であれば一番成功するパッターンらしい）、裏切りまくる戦略の個体は数を増やし、裏切り者であふれる世界ができあがる。
しかし、自分も裏切る、相手も裏切るとわかっている状態では、自分が相手のために動いても相手は自分のために動いてくれないということがわかっているし、相手が自分に何かをしてくれても自分は相手のために動くことはしないし、相手もそれをわかっている。
すると自分も相手も何の利益も得られないまま、何の協力体制も築けないまま、どん詰まったまま、両者は滅びていく。よって裏切ることが大前提の戦略は不安定な戦略ということになる。
裏切ることが大前提の戦略をとる者は、自分のコピーにうまく対処することができないため短期的な繁栄に終わる。
逆に、お互いに協力するという戦略をとった場合、そのコピーが増えたとしても、そのコピーと楽勝で協力することができるため、お互いに利益を享受しながらさらなるコピーを増やすことができる。よってその戦略は、自分のコピーにうまく対処することができるためその繁栄は長期的に安定することになる。
んじゃあ、少し発想を変えて、仮に自分が一人暮らしをしており、自分のコピーと生活することになったとして、果たして自分はそのコピーと気持ちよく暮らしていくことができるだろうか。
自分はそのコピーの思考パッターンが手に取るようにわかり、相手も自分の思考パッターンが手に取るようにわかる。
そのような自分とうまく協力して生活していくことができるだろうか。
自分が自分のコピーを大切に思っていなければ、相手のために家事をすることは損であるために、自分はどうにかして相手にやらせようとするだろうが、相手も相手で自分と同じように自分のコピーを大事に思っていないので、相手のために家事をやることは損であるために、家事を自分にやらせようとするだろう。
そこで二人は揉めることになるかもしれない。口論をし、自分がやらなくていい理由と、相手がやらなければならない理由をネバギバの精神で捻り出しては罵り合い、お互いにカリカリ君になってしまうかもしれない。
あるいはどちらかが折れるまで一切の家事が滞るかもしれない。相手はお互いにコピーであるから、自分が折れない限り相手も折れない。そうしてゴミのような部屋で過ごし、ゴミのような食事をとり、ゴミのような服を着ることになるかもしれない。そうしてお互いにカリカリ君になってしまうかもしれない。
自分のコピーのことを大切に思っていないければ、相手のために働いて生活費を稼ぐことも苦痛だろうし、うまくて健康的な食事を共有することも苦痛だろう。
最終的には、こんな苦痛ばかりをもたらす自分のコピーなどいっそいなくなってしまえばいいと思ってしまうかもしれない。
逆に、自分のコピーを大事に思えたらどうかしらん。自分のコピーのために気持ちよく家事を行なうことができるということは、そのコピーも自分のために気持ちよく家事を行ってくれる。自然と自分のコピーは自分にとってとてもありがたい存在になり、ますます大事になってくる。
家事は二人で分担できるので楽勝であるし、生活費を稼ぐことも自分や相手を大事にするために必要なことだとわかっているので特段苦ではなくなるだろう。
自分のことを誰よりもわかってくれる自分のコピーと協力体制を築き上げることができたらこれほど心強いことはない。
果たして自分は自分のコピーと良好な人間関係を築いて日常生活を送っていくことができるかしらん。
いやいやこんな奴とは無理だぽよ、と思ってしまうのか、全然楽勝ぽよ、と思うのか。
この思考実験により、自分が自分のことをどのように思っているのかがわかるかもしれない。どうして自分は自分に協力したくないと思うのか、あるいは協力したいと思うのか。
うまくまとまらないが、当然自分のコピーとはいがみ合うより協力していったほうがメリットは絶大だ。
そして現実的に自分のコピーというのは存在しない。自分自身がいるだけだ。日々いかに自分自身と協力できているか。協力できていないのはなぜなのか。このような問いを立てていくとおもしろいかもしれない。
声出して切り替えていこう。
