おすかわ平凡日常記

整え続ける日々

これから期間工になりたい人へ。


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コロナ禍が落ち着き始め、それと同時に「期間工」の募集が再開されるらしい。


「期間」というのは、自動車工場における「期間従業員」のことで、世間で言うところいわゆる契約社員で、自動車工場内の単純肉体労働に従事する労働者のことである。


かつて私は期間工として1年間働いていたことがあるので、これから期間工になろうと検討している方に向けてこの記事を書いていきたい。


まず期間工の待遇であるが、給料はとても良い。その辺の若い正社員よりは稼ぐことができると思う。


世間的なボーナスというものはないが、入社するともらえる金、一定期間遅刻無しで働き続けるともらえる金、契約を満了するともらえる金など、一定の条件をクリアすればまとまったお金がどかっと入ってくる仕組みになっている。


よって、遅刻や早退や欠勤をすることなく働くことができれば収入は一層増える。


また寮もあり、寮費は無料(食費は実費)で金も貯まりやすい環境に身を置くことができる。寮から工場への送迎バスもあるので交通費もかからない。


自分で用意するのは作業着のズボンとTシャツくらいで、それ以外の作業靴や上の作業着やベルトや帽子など、業務に必要な道具は全て支給される。


私は寮に住み、節約生活を送っていたため、1年間で300万円以上貯金をすることができた。ありがたいことである。


次に仕事内容であるが、主な仕事内容は先にも述べたように単純肉体労働である。


私は組み立てラインに配属されたが、ベルトコンベアーに載ってやってくる車両に対し、同様の作業をひたすら繰り返す。これが苦痛だ。


慣れるまでがとにかくきつい。


重い部品を持ち上げないといけない時もあるし、繊細な作業を要求されることもある。そしてあらゆる作業を迅速かつ正確にこなしていかなければならない。


私も最初は一台分の作業をやるので一杯一杯であった(無論、作業が遅れたら先輩がフォローしてくれる)。


ペースはだいたい一分につき一台で、一日の前半は「120分×2本」で、そして昼休みを挟み、後半の「90分×2本+30分+残業(基本的に45〜60)」なので、一日におよそ500台をさばく。


最初はこれがまじできつかった。一日の仕事を終えると、くったくたである。明日もあれをやるのかと思うと憂鬱で仕方なかった。


さらにこの仕事のきついところは、一週間おきに勤務時間が逆転する二交代制である点だ。


私が働いた工場の場合、午前6時半〜午後3時過ぎまで働くシフトと午後4時〜午前12時半頃まで働くシフトがあり、その2つのシフトに合わせて一週間おきに生活リズムを変えなければならなかった。


これも慣れるまでがきつく、うまくリズムを整えられなければ、睡眠不足に陥り、睡魔それによる気だるさと戦いながら長時間の肉体労働に耐えなければならない(ベルトコンベアーは待ってくれない)。その時に感じる奴隷感は凄まじかったな。


何度も述べるように、最初はとにかくきつい。しかし、次第に作業を覚えてきて、力まずスムーズに体を動かせるようになり、体力もついてきて肉体的なきつさは感じないようになってくる。また、2交代勤務に体が慣れてくると、睡眠不足のまま工場に行くことも少なくなってくる。


さらに慣れが進むと、肉体と精神が分離し、体が勝手に動いて迅速かつ的確に作業を行っている一方で、精神の方は仕事とは全く関係のことについてあれこれと思いを巡らせることができるようになってくる。あれはなんだか自分が本当にロボットになったように思えた瞬間であった。


仕事の肉体的なきつさは時間が経つにつれて解決していくが、どうしようもないのがその退屈さと奴隷感である。これはどうしようもない。本当にどうしようもない。


よって、私は一刻も早くこの仕事をやめたかったし、契約満了日が早く来ることを切に願っていた。


私が期間工になったのは、外国を放浪するための資金を貯めたかったからだ。


私は1年後には海外を放浪したいと強く思っていたし、そのためには200〜300万円を貯めたいと思っていたし、自分には商才がないのもわかっていたので、素人にも始めやすく、その割には給料が高い期間工は当時の私にとって唯一有効な手段であった。


そのような強いモチベーションがあったからこそ期間工の仕事を続けることができたと思っている。


逆に言うと、そのような強いモチベーションがなかったり、期間工になることが自分の人生にとって大きなプラスになると思えなければ、期間工はただただ退屈で奴隷感に苛まれるだけのきつい仕事であるので私はおすすめしない。


それよりも、給料は低いけれど、ベルトコンベアーに束縛されずに、規則正しい生活を遅れる仕事に従事する方が幸福度は高いと思う。


今の私の月給は期間工だった頃の私のものと比べれば低いものの、幸福度は今のほうが圧倒的に高い。


この期間でこの金額を用意しなければならないというような非常に切迫した状況にでも置かれないかぎり、私が期間工になるという選択肢を考慮することは絶対にないだろう(無論、期間工になれば全ての金銭的な問題が解決するわけではないが)。


ここまで読んで、それでも私にとっては期間工は魅力的な選択肢であると思えるのであれば、むしろ期間工になって一定期間で自分に必要な額の金を貯めて、自分のやりたいことをやるべきである。


実際に私は期間工を満了し、そこで稼いだ金をもって外国を放浪した。


本当にやりたいことをやったおかげで実にすっきりした。


なので、結論からいうと期間工をやって本当に良かったとも思っている。


期間工時代に身につけた節約や運動や読書の習慣は今の生活にもものすごく役立っているしな。


あれはいい人生経験だったわ。


最後に期間工のなりかたを簡単に書いておこう。


私はタウンワークを通じて期間工になった。


面接もスーツではなく私服で受けた(マウンテンパーカーにジーンズ姿)。


相手はこちらが体力があるかどうかくらいしか興味がないように思えた。


面接は5〜10分くらいで、1年間働いてお金を貯めて〇〇をしたいです。学生時代は運動部でした。週に何度かジョギングをしています。とかなんとか言ったら好印象を抱いてくれたようだった。


それで合格だ。


まずは期間工になることが自分にとって本当に有効な手段なのかどうかを改めて自問自答し、体力に自信があるというのであれば、ぜひ期間工への一歩を踏み出してみてください。


その最中は別にして、振り返ると案外面白い経験ですよ。